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【能登人を訪ねて】#110 中能登豪雨から2ヵ月 トキ認証米の農家は今…濱田栄治さん
ここからは能登人を訪ねて。羽咋市などを襲った豪雨からまもなく2カ月となります。邑知潟が決壊し壊滅的な被害を受けたトキ認証米の田んぼは…農家の現状と思いを聞きました。
(稲垣)「羽咋市の南潟町に来ています。8月下旬の豪雨で、この辺り一帯の田んぼは一面水浸しとなりました。この地で何年もかけ、トキが暮らしやすい田んぼを整備してきたある農家。今、必死に前を向こうとしています」
(稲垣)「こんにちは」
(濱田栄治さん)「宜しくお願いします」
羽咋市の濱田栄治さん。1989年から故郷で農業を営み、現在は邑知潟周辺の38ヘクタールで稲を栽培しています。
(稲垣)「今刈っているのは何になるんですか?」
(濱田さん)「これは石川県が育成した『百万石の白』という酒米になります」「これは予定通りの時期に刈れたんですが、真ん中(の時期のイネ)がなくなってしまった」
8月27日に中能登地域を襲った豪雨。羽咋市では24時間で343ミリとこれまでに経験したことのない大雨が降り、付近の川が決壊。これにより邑知潟周辺は、干拓地を含む400ヘクタールが大規模に冠水しました。その干拓地で濱田さんが栽培していたのが「トキ認証米」でした。
(濱田さん)「耕作していないところにビオトープを設置して…できるだけ水を張って、トキの餌となるような生き物が育ちやすい環境を作っていますし、もう一つは田んぼの畦の横にもう一本畦を作って、『江』というものを作って、そこにトキの餌となる生物が生きやすくしております」
(稲垣)「タニシめっちゃたくさんおる!」
邑知潟干拓地に設けられた「トキ放鳥推進モデル地区」ここで濱田さんは4年前からトキの餌場の整備と農薬や除草剤を半分に減らした米作りを行ってきました。
(濱田さん)「一番大きいのはドジョウ。最初一時間で生き物調査して数匹しか捕れなかったのが、今はもう何十匹も捕れるようになりました」「トキが絶滅した理由の一つに農業があったという事で、トキの放鳥が本州で決まった時に、これはもう一番に取り組んで、農業でトキの放鳥が成功するように貢献しようと思いました」
濱田さんの思いと努力が実り、トキ放鳥直後の6月には…
(濱田さん)「何度飛び立っても同じ場所にまた帰ってくる。繰り返し。このまま居ついてくれと正直思いました」トキ認証米を栽培する田んぼに放鳥したトキが飛来したのです。
(濱田さん)「努力が無駄にならなかった。畦畔(けいはん)も除草剤かけないで手刈りで、暑い中刈ったりしてたので、やっぱりそれはトキがこの地に居ついてくれるために、そういう活動をしていたので大変嬉しいです」トキが訪れる田んぼで栽培された「トキ認証米」。この秋、ブランド化して初めての出荷が行われるはずでした。先月下旬、水が引いたタイミングで、私たちは濱田さんと一緒に認証米を作っていた田んぼを見に行きました。
(稲垣)「前、僕お話伺ったところってこの近くですか?」
(濱田さん)「そう、ここ、ここです」「で、そこにビオトープがあってここに『江』がありますよってことで、『江』にはまだ水がたまっていて…」
(稲垣)「ああ、思い出した。あそこがビオトープだ」
(濱田さん)「トキの模型がいたんですよ」「模型も流されちゃっていなくなっちゃったんです。捜索願いです。木で出来ていたので、浮いてどこかに行っちゃったんでしょうね」
(稲垣)「信じられない光景が広がっているんですが…」
(濱田さん)「全部稲で覆ってたんですけど、もう枯れていますね。水は引いたんですけど」「収穫はもう諦めて、来年にちゃんと田植えできるような作業をこれからしていかなきゃいけないなと考えています」
(稲垣)「今年が1年目だったんですもんね」
(濱田さん)「認証米が制度化されて、今年が初めて認証米としての販売が開始するっていうことで『トキの認証米のファン作りをみんなでしようね』って言って、頑張って草刈りなり管理して、いいものを作ろうっていうことで頑張っていたんですけれども」「最後の最後で、収穫来週ってところで洪水が来てしまったっていう…本当にこれは残念な話です」
(稲垣)「(イネは)この後どうなるんですか?」
(濱田さん)「カッターで藁を裁断しないと、今度耕す時にロータリーに巻き付いて土を耕やせなくなるので、このイネを、藁カッターにかけなきゃいけないんです」「稲が立っていればコンバインで、収穫しないで藁を裁断することはできるんですけれども、もう倒れてたらコンバインは使えないので、トラクターの草刈り機で、藁を細かくしなきゃいけないっていう作業になります」丹精して育てたコメを、土に還す。辛い作業が待っていますそんな濱田さんの心を支えるのは…
(稲垣)「水害があった後、トキはご覧になられました?」
(濱田さん)「私は3回見ています。こういう洪水で餌場がなくなってしまってたので、どっか行っちゃったのかなと思ってたんです」「僕、もみすりしてたら空を飛んでいくトキを見たんです。『あ、どこに降りるんだろう』と思ったらちょうどその辺りに降りて。うちのスタッフの子に『今日カメラ持ってきてる?』って言ったら、『今日ないんだけど一応スマートフォンで頑張ってみるわ』って言うんで、あの土手の上から望遠でちょっと画像悪いんですけど撮れてる」
(稲垣)「そうなんですか?」
(濱田さん)「ええ、いるんです」この取材の途中、私たち取材班も…
(稲垣リポート)「羽咋市内の田んぼです。私の視線の向こうに今トキが2羽います。2羽いるんですが、つがいかどうかは分かりません。稲刈りが終わった田んぼで、餌をついばんだり毛づくろいをしたりしています」
(濱田さん)「僕らもトキがあの洪水でも近くにまでいてくれるっていうのは、やっぱり今後、この枯れた稲とかを再生するのに、『やっぱりトキもいるから頑張ろうね』っていう気持ちが、ちょっと意気込みが出てくる。餌場作り、僕らも来年以降も頑張ろうっていう意欲がちょっとだけ出てきました」
今月19日、邑知潟。稲わらの裁断が始まりました。泥をかぶった稲わらは、裁断するときに大量の土煙が上がります。
(濱田さん)「本当はコンバインで収穫できるお米だったのが、こうやって粉砕しかできない。一円にもならない作業をひたすらやらないといけないというのはやっぱり空しいですけど、もう開き直って来年の作付けが出来るように着々と準備をしています。涙を流していてもしょうがないんで…」
(稲垣)「来年こそはこの田んぼから認証米を」
(濱田さん)「今年は一俵も、一粒も出せませんでしたけど、来年はその分いっぱい採れたらいいなと思っています」